鈴木みのるのAEW登場と新日本のアメリカ戦略

鈴木みのるのAEW登場と新日本のアメリカ戦略

日本時間で9月6日午前9時から配信されたAEWのPPV、All Out 2021は非常に見どころの多い大会でした。AEWを真剣に見始めてから1年程度の私ですが、第1試合からメインまで3時間以上ずっと試合に見入ってしまいました。その中でも大きなサプライズの1つとして、鈴木選手の登場が挙げられるのではないでしょうか。

鈴木の威風堂々とした姿

この日は、ジョン・モクスリー選手と小島選手の対戦がありました。モクスリー選手にとっては永田選手に続く新日本のレジェンドとの対戦です。試合は打撃技が中心の展開でしたが、小島選手も堂々とモクスリー選手と渡り合い、好勝負を繰り広げました。想像以上に小島選手が踏ん張ったと言って良いでしょう。

しかし小島選手の健闘虚しく、最後はモクスリー選手のデスライダーに沈んでしまいました。試合中は荒々しいファイトで小島選手に襲いかかっていたモクスリー選手ですが、試合後は倒れている小島選手に頭を下げて敬意を表する姿を見せました。こうして会場は爽やかな空気感に包まれたのですが、その雰囲気を切り裂いたのが、鈴木選手の登場でした。鈴木選手の登場曲「風になれ」が鳴り響くと、会場は大盛り上がり。そしてモクスリー選手は動揺した表情を見せます。溜めに溜めてゆっくりと登場した鈴木選手が醸し出す雰囲気はまさにラスボス。リングサイドで観客を煽り、何やら観客に問いかけるような素振りを見せ、そして「風になれ!」の大合唱とともにリングイン。鈴木選手のアメリカでの人気がよくわかるシーンでした。

リング上ではモクスリー選手とやり合い、最後はゴッチ式パイルドライバーでモクスリー選手を沈め、観客にアピールをしてリングを降りました。モクスリー選手と試合を行った小島選手も新日本のレジェンドであり、実績で言えば鈴木選手を凌駕していると言えるのですが、そんな小島選手と比較しても鈴木選手の大物感、存在感を見せつけられるシーンでした。

Advertisement

レジェンドレスラー参戦が意味するもの

コロナ禍のマット界において、新日本プロレスの海外戦略はかなり積極的だと言えます。AEWのリングには永田選手と小島選手、ヒクレオ選手が上がりましたし、アメリカ興行には石井選手や棚橋選手が参戦しました。彼ら以外にも、ジェイ・ホワイト選手はIMPACTに参戦していますし、デビッド・フィンレー選手やジュース・ロビンソン選手はIMPACT以外の団体にも多く参戦しています。加えてオスプレイ選手もこれからSTRONGマットに参戦が決まっています。特にレジェンドレスラーのアメリカ遠征について、選手のレンタルで収益を補填しているというような見方をされている方もおられるようです。新日本のレスラーがAEWなどに参戦する一方でAEWからは誰も来日しないということがその根拠の一つのようですが、これは根本的に間違っていると考えます。

この参戦の非対称性には、いくつかの理由があると思います。システム的なものとしては、日米の入国制限の違いと両団体の興行形式の違いです。現在のところ、日本からアメリカに渡航する場合は隔離の義務がありません(州やワクチン接種などの条件によって違いはあると思いますが)。一方、アメリカから日本に渡航する場合は2週間程度の隔離が必要となります。往復すれば結局行きか帰りかで2週間の隔離期間があるわけですが、日本を拠点にしている選手が日本で隔離される場合と、アメリカを拠点にしている選手が日本で隔離される場合とでは、選手が抱えるストレスは大きく異なるでしょう。そして、AEWは基本的に毎週決まった曜日に収録をし、放送されます。日本で1試合を行うだけで3週分ほどの収録に穴を空けてしまいます。一方、新日本の方は興行と興行との間にオフがありますし、シリーズによって中心となる選手(ヘビー or ジュニア)が異なります。そのため、スケジュールを調整しつつ渡米することが可能になるわけです。

そして戦略の違いもあります。アメリカの団体で日本に拠点を持っている団体はありませんが(WWEも解散しましたね)、新日本はアメリカに拠点を持っています。日本とアメリカで別々に定期的な興行を開催している唯一の団体です。新日本の選手が渡米することで、STRONGのリングに上がりストーリーを展開させることもできますし、他団体への参戦も可能となります。実際、鈴木選手はSTRONG興行への参戦だけでなく、既に判明しているだけで10試合を他団体で行う予定になっています。鈴木選手は新日本メインではあるもののフリー契約だと思われますので永田選手や小島選手の場合とは少し異なりますが、新日本の看板を背負って参戦する点では同じです。

今はまだ気軽に行き来できる状況ではありませんが、新日本は確実にその先を見ていると思われます。そうした戦略の一環としてのレスラーの渡米だと考える方が自然なのではないでしょうか。プロレス生活では今後とも新日本のアメリカ戦略を注視していきたいと思います。

鈴木みのる選手のことを知りたいならこの本!

他の人気プロレスブログはここをチェック!クリックで応援していただけましたら嬉しいです。


プロレスランキング