NOAHとの対抗戦の先陣を切るヤングライオンは誰になるか?

長かった今シリーズも既にBOSJの公式戦が終了し、WTL公式戦の最終戦、そしてそれぞれの優勝決定戦を残すのみとなりました。これらにエントリーされている選手が熱い戦いを繰り広げていたのはもちろんのことですが、このシリーズを通じて第1試合を盛り上げてきたのはヤングライオンの三人でした。彼らはリングの上だけでなく、バックステージでも熱い戦いを繰り広げていました。
落ちこぼれとエリート
このシリーズを通じ、中島選手はしきりに自らのことを落ちこぼれと称しています。一方、後輩の藤田選手、大岩選手のことをエリートと呼ぶことで、両者に対する対抗心をあらわにしています。中島選手は落ちこぼれかどうかという点は議論が分かれると思いますが、新日本プロレスでデビューできたということは日本のプロレス界においては間違いなくエリートと言えるでしょう。それでも、中島選手と後輩の二人には大きな違いがあります。藤田選手は高校卒業後、大岩選手は大学卒業後すぐにストレートで新日本プロレスに入門しています。入門テストに落ち続け、4回目にしてようやく合格することができた中島選手とはやはり比較されてしかるべきでしょう。
また、新日本プロレス入門前は、藤田選手と大岩選手は高校、大学のレスリング部で活動していました。両者とも全国大会優勝といった大きな勲章はありませんが、そうした表舞台で実績を残してきました。一方の中島選手は地下格闘技やMMAといった、プロレスラーになるための正当な道とは違う場所からやってきました。
中島選手は高校2年生の時に格闘技イベントで格闘家としてデビューしています。そのデビュー戦の映像がありました。
これを見た限りでは、どのようなルールのもとで行われているのかよく分かりません。この試合は中島選手の秒殺勝利に終わりましたが、戦いとしては地上波で見る総合格闘技のような洗練されたものではなく、ケンカの延長線上にあるようなものに見えます。最後の中島選手のアームロックは腕の骨が折れそうなぐらい曲がっています。一歩間違えれば大怪我を負ってしまう可能性もある、そんな試合と言って良いでしょう。
もう1つ、中島選手がプロ格闘家として出場した試合映像もありました。
こちらも中島選手の秒殺勝利に終わっています。中島選手は学生時代にこうした地下格闘技やMMAの試合に出場し、命を削って戦っていたのです。こうしたところからファレ道場を経て新日本プロレスという夢舞台まで這い上がってきたのに、デビュー戦で大怪我を負ってしまい長期欠場に追い込まれてしまいました。中島選手の目を通すと、藤田選手や大岩選手をエリートだと評することは大いに理解できるところです。
バックステージでのアピール
藤田選手は11.23カルッツかわさき大会でのバックステージで、ノアとの対抗戦への意欲を口に出していました。
藤田「それと、あと一つ、どうしても言いたいことがあって。自分を、プロレスリング・ノアとの対抗戦に出していただきたいです。『BEST OF THE SUPER Jr』と『WORLD TAG LEAGUE』をしている最中にこんなことを言うのは先輩方に失礼というのは、もちろん分かってます。でも! 新日本プロレスのプロレスラーとして、自分もノアとの対抗戦に出させてください。お願いします!(※と、深々と頭を下げる)ありがとうございました!」(新日本プロレス公式サイトより)
新日本プロレスで最年少、経験が(大岩選手と並んで)最も浅い藤田選手が対抗戦第1試合に出場することはたいへん意義深いことだと思います。新日本プロレスの最底辺はこんなに高いところにあるんだということを見せつけるのにはうってつけでしょう。藤田選手のこの発言は先輩や上層部への相談などなく、独断で放ったのだろうと思います。もしかするとこの後で先輩レスラーから叱られたかもしれません。しかし、内藤選手の言うように、思いは口に出さなければ誰にも何も伝わリません。この発言がきっかけとなって、実際にカードが組まれる可能性もあります。また、翌日の11.24後楽園ホール大会のバックステージで藤田選手は再びこの件について口に出しています。藤田選手の新日本の看板を背負うという強い決意が感じられます。
藤田「大岩と、中島さんに勝たないといけないのは当たり前です。これからも何十回と当たることがあると思います。必ず自分が一番に勝ってみせます。でも、今はそれだけじゃないです。昨日も言いましたが、ノアとの対抗戦、自分のこの発言がどれだけ責任のあることかというのは分かっています。でも、自分もこの新日本プロレスでデビューして、新日本のプロレスラーなので、ともに戦いたいです。自分も対抗戦に出させてください。お願いします。(※深々と頭を下げる)ありがとうございました!」(新日本プロレス公式サイトより)
また、中島選手は11.27藤沢市秋葉台文化体育館大会のバックステージで、早く勝利を収めて言いたいことがあると口にしていました。
中島「クソーッ……ああ、クッソーッ! あと少しで仕留めれるかと思ったけど、今日もドローだった。クソッ……早く勝って、早く勝って言いたいことがあんだよ。早くヤングライオンで1番になって、そっから言いたいことがあんだ。まだまだ足りないな。もっと強くなって俺が1番に勝ってやる」(新日本プロレス公式サイトより)
結局このシリーズ中に勝利を収めることができませんでしたが、12.11アクリエひめじ大会のバックステージでその「言いたいこと」を口に出しました。
中島「クソッ! 今シリーズ、結局1回も勝てなかった。はあ、情けねえ。本当はよ、目の前にいるヤングライオン二人をぶっ倒して言おうと思ってたんだけど、今回全然結果出してなくて、だから最終戦の両国も、なんなら年内試合を組んでもらえるかも分からない。だから今ここで言いたい。オレはよ、アイツら二人と違えんだ。藤田は高校の部活動でレスリング3年、大岩は大学までレスリングやっとったらしいな。オレは違えよ。クリーンな部活動で同年代の奴らとやってなかった。アングラで社会に出れないような、出ちゃいけないような大人と地下格闘技で殴り合っとったんだ。大学の時はアマチュアじゃなくて、プロ格闘家として国内・海外で試合しとった。それも全部、新日本プロレスに、一番強い新日本プロレスに入りたかったからなんだよ。だから有り金全部つぎ込んでファレ道場にも行ったんだよ。オレが言いたいのは過去のことじゃなくて、アイツらが持っとってオレが持っとらんものはたくさんあるけど、アイツらが持ってなくてオレだけがもってるものがあんだよ。地下格で危ねえ奴、危ねえこと見たりやったりしとったよ。プロの時は今UFCでやってる奴ともやったよ。もし、若手の枠があるんだったら、もしまだこの業界で何の結果も出してないオレにチャンスを貰えるのであれば、鉄砲玉としてプロレスリング・ノアとの対抗戦に出してもらいたい。オレはどんな奴が相手でも鉄砲玉で突っ込んでいけんだ。腹はもう括ってあんだよ。次、いつ試合が組まれるか分からんけど、そん時までぜってーもっと強くなってやるよ」(新日本プロレス公式サイトより)
ここで中島選手も語っていますが、学生時代に地下格闘技に出場していたことが彼の大きな武器の1つです。得体の知れない相手、アウトローの世界に生きている相手ともやり合ってきた経験は他の2人にはないものです。きれいな戦いではない、何よりも勝利が求められる戦いには、こうした経験を持つ中島選手が適任という考えもあります。鉄砲玉とはあまりお上品な表現ではありませんが、中島選手の気持ちが痛いほど伝わってきます。
もう1人のヤングライオン、大岩選手はノアとの対抗戦について何も語っていません。大岩選手が他の2人と違うところは、このシリーズ中に唯一ヤングライオン以外とのシングルマッチが組まれていたことです。12.4アイメッセ山梨大会ではIWGP世界ヘビー級王者の高木選手とのシングルマッチを経験しました。これに対して中島選手は不満を隠そうともしていませんでした。11.30後楽園ホール大会では次のように語っていました。
中島「大岩、オマエはいいなぁ。今週末、チャンピオンと試合が組まれて、プッシュされとるなぁ、オマエは。俺とオマエの差は何だ? オマエがエリートで俺が落ちこぼれだからか?」(新日本プロレス公式サイトより)
そしてこの試合は当然ながら鷹木選手の勝利に終わったわけですが、注目すべきはその試合時間です。10分14秒という試合時間は、いつものヤングライオン対決の10分1本勝負よりも長く戦ったことを意味します。チャンピオンに10分では負けなかったということで、大岩選手の自信にもつながったでしょうし、何よりもトップの選手の力を存分に味わうことができたことは大岩選手にとっての財産とも言えるでしょう。大岩選手は団体トップとのこの試合が控えていたから、そしてその差を十分に味わったからこそ、ノアという他団体には目もくれないのかも知れません。ただ、3人のヤングライオンの中で会社が最もプッシュしているのがこの大岩選手なのかも知れません。鷹木選手の凱旋試合の相手になぜ大岩選手が選ばれたか、これは中島選手でなくとも疑問に思うところでしょう。大岩選手が新日本プロレス入門前に知人を介して鷹木選手に紹介してもらったことがあるそうですが、この程度の縁が今回のチャレンジマッチにつながったわけではないでしょう。おそらく、アマレス経験が最も長く、鷹木選手の技を最も上手く受けることができるのが大岩選手だったということだと思うのですが。
ノアとの対抗戦でどの3人が出場してもおかしくはありませんし、意味のある試合になるでしょう。UWFインターとの対抗戦の時のように是非とも第1試合は若手同士の試合を組んでもらいたいと願っています。そしてそのリングで新日本プロレスのヤングライオンが勝ち名乗りを受けることを願うばかりです。
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