藤田晃生が抜擢された意味と中島選手のこれから

藤田晃生が抜擢された意味と中島選手のこれから

1.8横浜アリーナ大会の全容が明らかになりました。さまざまに興味深いカードが並んでいますが、個人的注目はやはりオープニングマッチ、正式には第0試合part1です。ここに新日本プロレスで最も若く経験の浅い藤田選手が抜擢されました。

ヤングライオンのアピール合戦

1.8のWERSTLE KINGDOM横浜アリーナ大会でNOAHとの対抗戦が決まって以来、この対抗戦を意識する選手、不快感を示す選手、全く気に留める様子のない選手など、さまざまな反応が見られました。3人のヤングライオンもそれぞれの反応を示していました。その詳細については以前の記事で触れています。

NOAHとの対抗戦の先陣を切るヤングライオンは誰になるか?- プロレス生活

簡単にまとめると、真っ先に反応して対抗戦への出馬をアピールしたのが藤田選手でした。中島選手は「初勝利を遂げたら言いたいことがある」と匂わせつつも、シリーズを通して勝利することができなかったため、12.11アクリエひめじ大会のバックステージで対抗戦への出馬をアピールしました。大岩選手はシリーズ中に鷹木選手とのシングルマッチが組まれていたこともあり、対抗戦には無言を貫いていました。

新日本プロレスとしてはこの3人の誰を出してもそれぞれ意味のある戦いになったでしょう。結果としてはいの一番に名乗りを挙げた藤田選手が抜擢されることになりました。その決め手となったのは、やはりその気持ちをすぐに言葉にしたことでしょう。新日本プロレスとノアとの対抗戦が発表されたのが11月20日のことでした。その翌日の11.21 愛知県体育館大会に大岩選手と中島選手が出場しています。ただこの時は両者ともに対抗戦については全く触れていません。気持ちはあったのかも知れませんが、それを他の人間が推し量ることはできません。

そして次の大会となった11.23カルッツかわさき大会のバックステージで藤田選手がアピールをしました。やはり最初に手を挙げた人間は目を引きます。加えて、藤田選手の言葉や視線からはただただ出たいということではなく、新日本プロレスのレスラーとしてのプライドが滲み出ています。


藤田の対戦相手

第0試合Part.1で藤田選手と対戦するのは、ノアで最も若手の矢野安崇選手です。矢野選手は愛媛県今治市出身の21歳、166センチ74キロで高校時代はレスリングでインターハイ出場経験もあるようです。こうしたレスリングの実績は藤田選手を上回っているとも言えます。矢野選手は高校を卒業後にすぐに入門し、1年半後の10月28日デビューしており、かなりの期間を練習生として過ごしていたことがわかります。デビューまで時間がかかった理由はよくわかりませんが、ちょうどデビューするような時期と新型コロナによる大会中止の時期とが重なったという不運もあったのかも知れません。いずれにせよ苦労人の選手と言えるでしょう。

矢野選手はノアでは2年ぶりの新人レスラーということもあり、なかなか勝利には恵まれていません。これまでにタッグマッチでの勝利は経験していますが、シングルマッチでの勝利はいまだに掴めていません。タッグマッチで自力での勝利を掴んだのは、デビューからちょうど1年後の2021年10月28日のことでした。この時は味方選手のサポートもあり、一瞬の隙をついてのローリングクラッチホールドでNOSAWA論外選手から3カウントを奪いました。


決して綺麗な勝ち方ではありませんが、こうした経験の一つ一つが矢野選手の財産となっていることでしょう。

一方の藤田選手は愛媛県新居浜市出身の19歳で、178センチ83キロです。入門から5ヶ月でデビューを果たしています。3人のヤングライオンの中では最も若く、最も体の小さい選手です。これまでに勝利はありません。数字で比べるとかなり差がある部分も見られますが、プロフィール的にも最も矢野選手と近いと言えるのが藤田選手と言えるでしょう。

藤田抜擢が中島にもたらす影響

今回の藤田選手の抜擢の要因は、先にも触れたようにいの一番に強烈にアピールをしたことでしょう。その意味では中島選手は出遅れてしまいました。藤田選手より先んじてアピールするチャンスがあったにもかかわらず、「勝って言いたい事がある」という匂わせ発言ですら藤田選手のアピールよりも後になってしまいました。また、実際にヤングラインの中で最初に勝利を挙げ、その実績を提げて満を辞して堂々とアピールする事ができれば中島選手抜擢の可能性もあったかも知れません。しかし結果的には勝利を掴む事なく、最後のチャンスにアピールをしたにとどまりました。

中島選手の立場からすると、後輩の大岩選手が鷹木選手とシングルマッチを行い、もう1人の後輩の藤田選手がノアとの対抗戦の先鋒として出場するということは非常に悔しいに違いありません。中島選手のいうエリートと落ちこぼれ、プッシュされている選手とそうでない選手との明暗がはっきりとしてしまいます。ただ、こうした反逆心、雑草としての生き方が中島選手の魅力なのかも知れません。そしてこれを機に中島選手がどんどんとアピールをするようになってくるかも知れません。藤田選手とのアピール合戦がさらにバチバチのヤングライオン対決に発展していくように思います。

どのような試合になるか?

藤田選手と矢野選手の試合がどのような展開を見せるのか、全く想像もつきません。矢野選手の動きを評価できるほどの材料もありませんので、勝敗の予想もつけ難いです。他の全ての試合に言えることですが、どちらの団体も負けるわけにはいきません。しかし、対抗戦は第1試合、そしてメインが非常に大事になってきます。新日本 vs Uインターの対抗戦でも第1試合のタッグマッチで石沢選手が桜庭選手から勝利を奪ったことが新日本に勢いをつけました。第1試合から若手が熱い戦いをすることで、後に控えている先輩レスラーの魂に火をつける事ができます。そうした重要な役割をデビュー4ヶ月の19歳が担うわけです。

さて、両者のデータを比較すると、体格は藤田選手の方が上回っています。それでもデビューが10ヶ月早い矢野選手の経験は藤田選手を大きく上回っています。基本的な技しか用いない藤田選手に対し、矢野選手の方が技の引き出しは多い事でしょう。ただ、こればかりや実際にやってみなければわかりません。1つのデータとしては、矢野選手はデビューからこれまでにシングルマッチを21試合行い、全て敗れています。一方の藤田選手はシングルマッチを26試合行い、7敗19引き分けです。矢野選手には同期がおらず、おそらく最もキャリアの近いのが2年先輩の岡田欣也選手でしょう。これまでの21試合のシングルマッチは全て先輩の胸を借りる形で行われていたと考えられます。藤田選手は同期の大岩選手、ほぼ同期とも言える中島選手と連日バチバチのシングルマッチを繰り返してきました。一方でSHO選手やデスペラード選手の胸を借りる試合も経験しています。今回の対抗戦では、どちらかが引っ張って試合を作るのではなく、互いに気持ちをぶつけ合いながらなんとか試合を作っていくような形になると思います。矢野選手はこれまでにそうした試合をほとんど経験していないでしょうから、そうした面では藤田選手は有利な立場にいるのかも知れません。

この試合を経験することで両者共に大きく成長する事でしょう。また、その姿をリングサイドから見つめる中島選手、大岩選手はさらに対抗心を燃やす事でしょう。この試合が1.8の大会だけでなく、両団体の未来にも大きな影響を与えるのではないか、そのように感じています。

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