IWGP世界ヘビー級選手権試合での真の勝者

IWGP世界ヘビー級選手権試合での真の勝者

WRESTLE GRAND SLAM 東京ドーム大会は飯伏選手の欠場によるカード変更などがありましたが、大会としては大成功したのではないかと思います。そしてこの大会で最も株を上げたのは棚橋選手ではないでしょうか。

準備ができていたエース

過去に直前でカードが変更されると言うことはありました。しかし、私の記憶している限り、ドーム級のビッグマッチで直前までどっちに転ぶかわからないと言う状況はあまりなかったように思います。今回、飯伏選手に関する第一報が出たのは7月10日の札幌・真駒内セキスイハイムアリーナ大会当日でした。

【お詫びとお知らせ】飯伏幸太選手が、新型コロナワクチン接種による副反応の症状がみられるため、 7月10日(土) 真駒内大会を欠場へ – 新日本プロレス公式サイトより

タイトルにもあるように、この段階ではワクチン接種に伴う副反応の症状による欠場ということでした。その後、7月11日、7月17日にも飯伏選手欠場の発表があり、7月21日には誤嚥性肺炎により東京ドーム大会前日の愛知県体育館大会まで全て欠場することが発表されました。おそらくこの期間は、どうやっても出場したい飯伏選手と、その意思をできる限り尊重したい会社がギリギリまで様子を見ていたのでしょう。しかしドクターストップがかかったために東京ドーム大会当日に欠場が発表されました。

飯伏選手の体調を棚橋選手がどこまで把握していたかはわかりません。しかし、ギリギリのせめぎ合いが続いているということは感じていたことでしょう。そして、7月24日愛知県体育館のメイン後、「準備できてまーす!」というアピールを行うに至りました。「肉体的な準備」という意味では、まだ万全の準備ができていたとは言えないでしょう。しかし、準備ができているとアピールすることで、会社に対し、そしてもしかすると飯伏選手に対しても安心感を与えることができました。

言葉のチョイスもまたエースらしいと思います。「俺が行くぜ!」だったら飯伏選手からメインの座を積極的に奪いにかかるように見られます。そうではなく、あくまでも代役として自分がいるというアピールです。

棚橋選手に寄せられる信頼

今回に限らず、カード変更自体はそれほど珍しいことではありません。しかしながら、東京ドームのメインイベントという大舞台でのIWGP世界ヘビー級選手権試合です。体の問題だけでなく、気持ちの問題も難しいものがあったことでしょう。通常であれば前哨戦を通じて、あるいは試合後やバックステージでのコメントを通じてお互いの気持ちを高め合い、ファンの感情移入を誘い、それを爆発させることで大会場でのビッグマッチに相応しい名勝負を生み出します。それが今回に関しては前哨戦なしでのいきなりのタイトルマッチです。アントニオ猪木さんが現役の頃は地方大会でポンとタイトルマッチが組まれることも珍しいことではありませんでしたが、そうしたものに近いのかもしれません。この戦いに繋がった理由や背景など全く関係なく、会場に詰めかけた観客をただ満足させるような試合を行わなければなりません。リング上で魅せるものが全て、と言えば格好はいいのですが、会場を盛り上げるためには観客にどれだけ感情移入させるかが鍵になってきます。

今回の決定は、そうした難しい役割であっても棚橋選手にならば任せても大丈夫と判断されたのでしょう。今のファンの多くは、棚橋選手が新日本プロレスを守ってきたということをよく知っています。棚橋選手がメインのリングに立つならば、そこに自然とストーリーが生まれ、無条件で感情移入できるわけです。すでに選手としてはピークを過ぎた状態なのかもしれません。しかし、ビッグマッチにはきちんとコンディションを整えてきて名勝負を繰り広げる棚橋選手の価値はまだまだ衰えていないと言えます。

飯伏選手の代役として東京ドームのメインに上がる選手の候補としては、棚橋選手以外にEVIL選手も挙げることができたでしょう。しかし、会社としては棚橋選手を選びました。EVIL選手が悪いわけではありませんが、こうした逆境の中でも観客に夢と感動を与えられるのは棚橋選手しかいませんでした。今回、「なんで棚橋なんだ!」という声はあまり聞かれませんでした。それはやはり、この状況だったらやっぱり棚橋選手だよね、というファンからの信頼もあったためでしょう。そして、ただリングに上がっただけでなく、鷹木選手と激烈な戦いを繰り広げました。棚橋選手がベルト奪取か!と思わせるシーンもあり、ファンの感情はあちらへこちらへと激しく揺さぶられました。試合そのものをとっても名勝負だったと言えますが、そこに棚橋選手と鷹木選手、飯伏選手、新日本プロレスをめぐるさまざまな感情が入り混じり、感動的な試合になったのではないでしょうか。

負けてなお勝者

試合後、辻選手に肩を担がれて引き上げていく棚橋選手に対し、鷹木選手は次のような言葉をかけています。

棚橋! …棚橋弘至、アンタやっぱスゲェよ(※大拍手)。さすがはエース。ある意味、本当の勝者はアンタかもな?(新日本プロレス公式サイトより)

棚橋選手は試合には負けましたが、自らの果てしない存在感を会社に、選手に、そしてファンに示すことができたのではないでしょうか。そして、これを機に棚橋選手はまた強くなるように思います。

ピンチをチャンスに変えれませんでした。変えれませんでしたが……決めました。一つ決めました。俺はもう二度と口が裂けても弱音は吐きません。今ある棚橋で、今の体で、もう一度、もう一度トップへ。それが……(涙声で)それが応援してくれてるファンの方にできる精一杯だし、俺はもっとみんなの期待に応えたいです。チャンピオン、強いね。NEVERで戦った時よりも格段に進化してた。タフだし、何より自分の試合に自信があった。これから俺がやるべきことはもう一度這い上がること、決して諦めないこと。年の半ばでドームで大一番できて、(立ち上がって)気合い入りました。気合い入りました(新日本プロレス公式サイトより)

棚橋弘至100日プロジェクト62日目のこの日、肉体的なコンディションとしてはまだ3分の2の仕上がりでした。しかし、こうしたことを理由にせず、今の体で這い上がっていくと宣言しています。太陽のエースが這いつくばってでも上を狙っていくという、ある意味では吹っ切れた状態なのかもしれません。今後の棚橋選手のさらなる奮起に期待したいと思います。

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