辻陽太のイギリス遠征が持つ意味は?

8月1日の壮行試合を経て、上村選手と辻選手はヤングライオンを卒業し、海外遠征に向かうことが決まりました。上村選手は現地時間8月14日(日本時間8月15日)に開催されるロサンゼルス有観客興行RESURGENCEに出場することが発表されました。一方の辻選手は本人の希望通りメキシコに遠征するものと予想されていましたが、イギリスのRPWより驚きの発表がありました。
RPWでの武者修行
8月10日にRPW公式Twitterで発表されたのは、辻選手が9月4日のシェフィールド大会、そしてその先の興行にも参戦するということでした。
YOTA TSUJI IS COMING!
Saturday September 4th, Sheffield & beyond! https://t.co/LhHedYxXS8 for tickets pic.twitter.com/c2pYx3UckO— Revolution Pro (@RevProUK) August 9, 2021
RPWといえば、現在海野選手が参戦している団体です。また、岡選手がグレート-O-カーンと姿を変えて参戦したものこの団体です。ザック・セイバー・ジュニア選手やウィル・オスプレイ選手もこの団体を経て新日本にやってきました。現在、新日本プロレスと最も良い関係を構築できている団体の一つと言っても過言ではありません。そのRPWが辻選手の遠征先として選ばれたわけです。
興行は平均して1ヶ月に4回程度です。ロンドンだけでなくシェフィールドやサウサンプトン、ブリストルなど、イギリス各地で試合を行っています。新日本の海野選手は8月21日の9周年記念興行にて、リッキー・ナイト・ジュニア選手の持つブリティッシュヘビー級王座に挑戦します。余談ながら、このブリティッシュヘビー級王座の位置付けがややこしい状態になっています(詳細はこちらの記事にまとめています→【RPW】RKJがブリティッシュヘビー級王者宣言!オスプレイの復帰は? – プロレス生活)。もともとリッキー・ナイト・ジュニア選手はサウスサイドヘビー級王者でした。そしてこの王座は将来的にオスプレイ選手の持つブリティッシュヘビー級王座と統一される予定だったようです。しかし、リッキー・ナイト・ジュニア選手が一方的にブリティッシュ王者を宣言している状態です。オスプレイ選手のベルトは剥奪されたわけでもなく、現在は2人のブリティッシュヘビー級王者がいる状態と考えていいでしょう。
No. In Bristol RKJ declared his Southside Championship THE British Heavyweight Championship, introducing the physical championship belt Will could never win and said Ospreay’s belt is very much disputed.
We are still waiting for comment from Will Ospreay. https://t.co/pd2SltTtQi
— Revolution Pro (@RevProUK) August 6, 2021
【質問者】オスプレイはタイトルを剥奪されたのですか?
【RPW】いいえ。ブリストルでリッキー・ナイト・ジュニアはサウスサイドヘビー級王座をブリティッシュヘビー級王座として宣言したのです。ウィルがどうしても手に入れることができなかったベルト(旧ベルト)を見せながら、そう宣言したのです。そしてオスプレイのベルトは非常にその妥当性に非常に強く異議が唱えられているとも言いました。(翻訳:フロ)
辻の遠征先はなぜイギリスなのか?
さて、辻選手の話に戻りましょう。メキシコ遠征を強く熱望していた辻選手の遠征先がイギリスになったことに驚いたファンも多かったのではないでしょうか。私もその1人です。ヤングライオンの海外遠征先の決定は会社としての総合的な判断の結果でしょう。そもそも辻選手のように具体的な遠征先の希望を主張するヤングライオンは私の記憶にありません。確かケンドー・カシン選手はメキシコ遠征を希望していたもののヨーロッパ遠征になったと記憶していますが、せいぜいそれぐらいです(これも記憶違いかもしれません)。それでも辻選手のように強く主張していたわけではなかったように思います。では、今回はなぜ辻選手の希望が通らなかったのかを考えてみたいと思います。
ビザや入国条件の問題?
私が調べたところ、メキシコ国内ではまださまざまな制限があるものの、日本からの入国が制限されているわけではなさそうです。執筆時点(8月10日)ではイギリスの方がむしろ条件が厳しく、入国後の隔離期間が設定されています。ワクチン接種などを条件にその隔離期間を緩和するかどうかという動きがようやく出てきた感じです。労働ビザの取得に関してはよくわかりませんでした。ただ、こうした理由からイギリスになったというわけではなさそうです。
試合出場機会を得るため?
海外遠征に出ても試合に出られなければその意味は半減します。RPWとCMLLを比較すると、CMLLの方が選手層が厚いです。ではCMLLに遠征しても試合に出られないかというとそうでもなく、カワトサン選手もコンスタントに試合に出ていましたし、それ以前にメキシコ遠征した選手も同様です。やはり興行数が多いというメリットもあろうかと思います。一方のRPWは1週間に1回程度の興行です。ただ、海野選手も全ての興行に参戦しているわけではありません。1ヶ月に3試合ぐらいでしょうか。試合の機会だけを捉えると、圧倒的にCMLLの方が有利だと思われます。
会社間の関係の問題?
新日本とCMLL、RPWの関係を比較してRPWになったのではないかという考えもできます。しかし、新日本とCMLLは正式に業務提携をしており、2月には共同声明を出しています。RPWともちろん何らかの提携を結んでいるとは思いますが、オフィシャルな声明が出されたことは記憶にありません。ですので、CMLLとの関係が悪くなったからというわけでもなさそうです。
辻選手の育成方針?
私は辻選手の遠征先がイギリスになったのは、何らかの外的な条件によってそのように決まったのではなく、会社が辻選手の育成方針を考えた結果、積極的な理由でそのように決められたのではないかと考えています。辻選手は見かけによらずかなり身軽です。入門テストの際にコーナーからのバック宙を決めていたという証言もありますので、いろんな空中殺法をするだけの身体能力はあると思います。辻選手が見せたいキャラクターというのはスーパーヘビー級のルチャドールといったところでしょうか。しかしそれが前面に出過ぎていると、キャラやムーブに溺れてしまいかねません。CMLLのルチャ・リブレの世界では人気者になれても、そのキャラクターとムーブをそのままに凱旋帰国をしたところで新日本のリングにマッチしなくなってしまう危険性もあります。そのため、イギリス遠征ではどのようにして効果的に自分のルチャの動きを観客に魅せることができるのかを悩み、考え、身につけてほしいということなのかなと推測しました。RPWではどちらかというとクラシカルなレスリングが繰り広げられます。そういう環境に自然と馴染むようなルチャの動き、それが辻選手のオリジナルのムーブとなっていくのではないかと思います。かつてケンドー・カシン選手が唯一無二の存在感を示したように、辻選手にも大化けしてほしいという会社としての親心からのイギリス遠征となったのだろうと推測しています。理由はともあれ、イギリスで元気に頑張ってもらいたいですね!
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