飯伏のUSヘビー挑戦は寄り道か、それとも近道か

飯伏のUSヘビー挑戦は寄り道か、それとも近道か

USヘビー級王座を獲得した後、私の予想に反して棚橋選手は日本に戻ってきました。USヘビーを手にAEWマットに乗り込んでいくものと思っていましたが、棚橋選手の選んだ道は飯伏選手とのタイトルマッチでした。

棚橋からの挑戦状

私は棚橋選手がAEWに乗り込んでいくのではないかと予想したのにはいくつか理由がありました。その辺りのことは過去の記事をご参照ください。

AEWのPPVで棚橋vsモクスリーが実現か? – プロレス生活

また、私だけではなく海外メディアでも棚橋選手はG1欠場になるのではないかという報道もありました。しかし、そうした予想をいい意味で裏切ってくれました。

渡米前、メットライフドーム2連戦での棚橋選手のカードが未決定でした。そしてその段階ではメットライフドーム大会の目玉となりそうな因縁もなく、RESURGENCEへの出場後すぐに帰国したところでメットライフドーム大会前の試合には出場できないことから、新たな因縁を作ることも不可能そうでした。しかし、棚橋選手は自らでその扉を開けてきました。

棚橋選手がUSヘビーを奪取することを予想していたファンの方は多かったかもしれませんが、このような展開を予想していた方はおられたでしょうか?飯伏選手を逆指名するということは私も全く予想だにしていませんでした。同時にワクワクする展開です。

ここで棚橋選手は「お前がIWGP(世界ヘビー)を目指すのはもちろんわかっている。けど、寄り道して行っても悪くはないと思うよ」と語っています。東京ドーム大会のIWGP世界ヘビー級選手権試合に出場しようと最後までもがいていた姿を知っているのでしょう。棚橋選手にしてみれば、飯伏選手の目指すのはIWGP世界ヘビーしかないということもまた理解していると思います。同時に、飯伏選手の現状を鑑みるとすぐにそれを実現することは難しいと見ているのではないでしょうか。

棚橋選手がメットライフドームでの初防衛戦の相手に飯伏選手を逆指名したのは、もちろん自分がメットライフドームのリングに立つということも一つの理由だったでしょう。しかし、飯伏選手が復帰するのにふさわしい舞台を整えるという理由もあったと思います。さらに、自らが対戦することで、飯伏選手の回復具合を肌で感じたいという思惑もあるのではないでしょうか。すでに飯伏選手の体は日常生活を送るのには十分回復していたとしても、リング上で満足に動けるのか、試合をこなすことができるのかということは未知数です。リング上で肌を合わせることで棚橋選手は飯伏選手の現在地を測ることができますし、飯伏選手自身にもそれが見えてきます。

仮に飯伏選手がUSヘビーを獲得した場合は逆にIWGP世界ヘビー級王座への挑戦が遠のきます。また、この試合に敗れた場合もまたIWGP世界ヘビー級王座への列の後方に位置付けられてしまいます。IWGP世界ヘビー級王座を狙う飯伏選手にとってはあまりメリットがありません。そうした意味から棚橋選手は「寄り道」と言ったに違いありません。棚橋選手が言葉を詰まらせつつ、絞り出すような形でこのメッセージを送っていたのは、そうした葛藤があったからだと思います。

Advertisement

飯伏からの回答

棚橋選手からの逆指名を受け、飯伏選手はすぐに反応しました。

ここで飯伏選手は「寄り道って何ですか?寄り道なんてないですよ。僕の今一番の近道、それは棚橋さん、あなたと戦うこと。」と語っています。このメッセージの中で、飯伏選手はUSヘビー級王座のことは何も触れていません。飯伏選手にとってはUSヘビー級王座は眼中にないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、少なくとも飯伏選手にとっては「USヘビー級選手権試合」という冠よりも「vs 棚橋弘至」ということの方が大きな部分を占めていることには違いありません。棚橋選手と戦うことで新日マットの中心に戻ってくることができる、棚橋選手と戦うことで多くのファンの目を惹きつけることができる、しかもメットライフドームという大舞台でそれが実現できるということは、飯伏選手にとっての「近道」ともなるでしょう。メッセージを送る飯伏選手の視線や表情にはある種の決意も見えますが、それ以上に棚橋選手への感謝の気持ちも見え隠れしているように思うのは私だけでしょうか。

パートナーとしての距離感

棚橋選手と飯伏選手といえば、ゴールデンエースとしてIWGPタッグ王座を獲得したこともありました。棚橋選手のコンディションが上がってこない時期もありましたが、両者は分裂することもなく、時には厳しくあたりつつも支え合いながらやってきました。タッグ戦線を離れてからも適度な距離感を保ちつつ、本隊の二枚看板として並び立ってきたように思います。

ここ最近の話題の中心となっていたRoppongi3Kをゴールデンエースと比較する向きもあるようですね。いきなり分裂しなくてもこうした関係、つまり時には互いにぶつかり合いつつも支え合う関係のパートナーも成立するのではないかということです。ただ両チームの決定的な違いは、Roppongi3Kはデビュー前から常に2人でセットとして動いてきたのに対し、ゴールデンエースはそれぞれ別の道を歩んできて現在の位置に収まったということです。お互いにリング上で肌を合わさないと理解できない部分もあるでしょう。Roppongi3Kの2人に欠けていたのはおそらくその部分です。そういう意味ではRoppongi3Kも一時的に別の道に進むのもやむなしと言ったところでしょう。デビュー前から一貫して2人セットでタッグチームを続けているのはTPG練習生からの関係の邪道&外道ぐらいです。その両者とて一時的に別のユニットに所属したこともありました。

ゴールデンエースのように、並び立つだけではなく時には対角線に立つことで高め合うことができるというのはタッグチームとしての理想形だと私は思います。この試合でどちらが勝利しようと2人の関係性が崩れることはないでしょう。両者にとって非常に意味のある試合になることは確実だと思います。

ブログランキング参加中。クリックでぜひ応援をお願いします!


プロレスランキング