SHOとYOHの間に生まれた違和感

Roppongi3K分裂後では初めてのYOH選手のインタビューが公開されました。その中でYOH選手は自らが感じていた違和感について語っています。果たしてその違和感はどこから生じたものなのでしょうか。
YOHは何を語ったか
このインタビューは新日本プロレス公式サイトにテクストの形で、YouTubeの新日チャンネルに動画の形で公開されています。
ここでYOH選手は「違和感」についてこのように語っています。
YOH ボクだけがずっと感じてた、“違和感”というものがあって……。それは自分が復帰したときから、徐々に強くなっていて。それで『SUPER Jr. TAG LEAGUE』、その前ぐらいから確実に「なんか違う」っていう。いつもの3Kなんだけど、いつもの3Kじゃなくて。でも、周りは誰も気づいていなくて、ボクだけが感じているもので。もっと言ったら、いつものSHOくんじゃなくて、どこかが違くて。でも、それがわかんなくて苦しくて。
――原因がわからないと。
YOH こう言ったら失礼かも知れないですけど、試合に全力で集中できない自分がいたんですよね。「これって、一体なんなんだろうな?」っていう違和感を抱えながら試合をしていて、結果的にボクがフォールを取られるかたちになって。それが気持ち悪くて……。だから、「わかんない、わかんない」ってなってたんですけど、いまとなっちゃ、「わかりたくなかった」ですよね。
――感じていた違和感の正体は、SHO選手に対してだったと。
YOH ウン。「それだったんだ」って。(新日本プロレス公式サイトより)
YOH選手が感じていた「違和感」の正体が「それ」だったかはともかく、SHO選手とYOH選手の間に何らかのズレが生じており、それが大きな亀裂となってしまったことは事実でしょう。
私はYOH選手のことをそれほど詳しく知っているわけではありません。しかし、これまでのインタビュー等を見る限りではとても心の優しい青年という印象を受けます。ある意味では優しすぎるのかもしれません。そしてヤングライオンの頃、あるいはそれ以前の練習生の時代だったのかもしれませんが、2人で頑張っていこうと語り合ったその約束を愚直なまでに守り抜こうとしました。Roppongi3Kというチームを2人にとっての安住の地にしようとしていたのでしょう。しかしSHO選手は変わりました。そのきっかけはおそらく2021年7月1日のGLEAT参戦でしょう。
SHOの言葉から見る心境の変化
SHO選手は本人もそう言っていたように口下手です。それほど豊富なコメントを残す選手ではありません。しかし、7月1日以降、明らかに言葉に力が込められるようになってきました。
例えば7月14日のバックステージでは次のように語っています。
日本中がこの状況の中でも、これだけのお客さんが(来てくれた)。そして試合をして拍手をもらう。これってスゲェありがたくて、奇跡なんじゃないかって。そん中でも俺はジュニアの頂点、何がなんでも頂点を目指したい。ロビー(・イーグルス)がああやって挑戦表明したように、おとなしく順番待ちしてるの、俺の性格なのか仕方ないかもしれないけど、それをどう思うか考えないといけないな。2021年下半期、必ず結果を残してみせます。(新日本プロレス公式サイトより)
7月1日のGLEAT旗揚げ興行でSHO選手は痺れる戦いを経験しました。新日本の看板を背負い、初めてのルールで、絶対に負けられない試合を行いました。この経験がSHO選手を一回りも二回りも大きくしたのでしょう。
次の7月17日のバックステージでは、YOH選手とSHO選手のコメントの温度差がかなり広がっていることがわかります。
YOH「戦いをどこに持っていくか。ロッキーさんもロビーさんも帰ってきたし、だから共存、共闘。その中で自分を磨いていきます」
SHO「今年2021年、俺もYOHさんもシングルのタイトル挑戦した。そして今回ロビー。いつぶりだ? もしかしたらCHAOSジュニアにベルトが戻ってくるかもしれない。それは喜ばしい。喜ばしいことだ。でも、俺も狙うものは狙ってるから。これはずっと変わらねえ。もちろんYOHさんもそう、ロッキーさんもそうだと思う」(引用ここまで)(新日本プロレス公式サイトより)
優しく温和なYOH選手は、チームの勝利を素直に喜べるのでしょう。それが「共存、共闘」という表現につながっています。一方のSHO選手はロビー選手を応援しながらも、そのベルトを狙う姿勢を崩していません。
こうしたSHO選手の常在戦場の姿勢に加え、7月19日以降のSHO選手の言葉はさらに意味深になっていきます。
SHO「ドーム(の対戦カード)に俺の名前ねぇけど、こうしてね、ジュニアのトップを争う闘いにね、同じリングにこうして立てて、前哨戦の1試合、地方での1試合だろうが、そんなん関係ねぇ。チャンピオンと挑戦者、間近で、ジュニア最高の闘いを感じられるんだ。こんなチャンスねぇだろ。間近で見て、感じて、全部吸い尽くすぐらい、吸血鬼並みに吸い尽くすぐらい吸収して、次につなげてやるよ」(新日本プロレス公式サイトより)
闘いを見て、感じて、吸い尽くして次につなげると語っています。これは7月24日のコメントでも同じです。
SHO「この『SUMMER STRUGGLE』、こうしてジュニア最高の闘いの前哨戦、こうして間近で、一緒のリングで感じてたんだ。得たものはあるよ。いろんな闘い方があるんだ。得たものはある。全部吸収して、この前も言った通り、全部、すべてだ、自分のものにしてやる。でもね、明日、東京ドーム……もちろん、ロビーさん、あんた、応援してるぜ」(新日本プロレス公式サイトより)
7月1日のGLEAT旗揚げ戦は、ブーイングを上げられる状況ではないため目立ちませんでしたが、SHO選手の扱いは明らかに外敵のヒールでした。そうした中で対戦相手を冷酷に絞め落としました。この戦いがSHO選手のヒール魂を喚起させたとまでは言えないでしょうが、上昇のためのヒントになった可能性があります。
Roppongi3K崩壊の原因
YOH選手が感じた違和感は、SHO選手のこうした何が何でもトップを獲るという意識が発散されていたために生まれたのかもしれません。しかし、それを「違和感」としか感じられなかったところが、Roppongi3K崩壊の引き金となったのでしょう。チームとして目指す部分は同じでも、両者の個人としての闘い方は最初から異なっていました。それが今回、チームとして同じ方向を向いていないとSHO選手は感じたのでしょう。タッグチームがお互いを高め合う存在で無くなった時、タッグチームという存在が自分の足枷になり、タッグパートナーが自分の足を引っ張る存在になります。おそらくSHO選手はこれをちょっとしたすれ違い、あるいはケンカ程度に収めておきたくなかったのでしょう。それでは優しいYOH選手は自分の居場所を守ってくれる、それではいけないということでのあの行動だと思います。ショックアローを決めることで、お互いにとってのRoppongi3Kという居場所をなくし、逃げ道をなくした上でお互いに遠慮なく本気でぶつかっていこうというメッセージだと思います。彼らがいずれベテランと言われる世代になり、下の世代からの突き上げが激しくなってきた時がRoppongi3K再結成の時だと私は思っています。しばらくは違う道を歩むことになった2人ですが、その2本の道の先が1つにつながっていることを信じるばかりです。
ブログランキング参加中。クリックでぜひ応援をお願いします!
-
前の記事
ジェイ・ホワイトがアメリカマットで見せる存在感 2021.08.22
-
次の記事
武藤vs蝶野以来37年ぶりの新人同日デビュー対決 2021.08.24