なぜディック東郷の介入は嫌われるのか?

なぜディック東郷の介入は嫌われるのか?

G1 CLIMAX 31のBブロックの戦いはYOSHI-HASHI vs EVILで幕を開けました。試合ではいつものようにディック東郷選手の介入が入りました。TwitterのTLを見ていると非常に評判が悪いようです。そこで、なぜディック東郷選手の介入が支持されないのかを考えてみました。

介入そのものの是非

プロレスにおけるセコンドの介入は昭和の時代からありました。セコンドの介入はわかりやすい反則行為で、ヒール選手へのヘイトを集めやすい行為でもあります。内藤選手が初めてIWGPヘビー級王座を戴冠した2016年4月10日両国国技館大会のオカダ戦でも、EVIL選手やBUSHI選手が、そして最後にはこの日初登場のSANADA選手の介入もありました。しかし、この介入には一部で歓声も上がりさえしました。グレート-O-カーン選手が初登場した時も介入でした。この時はオカダ選手にエリミネーターをかけ、オスプレイ選手が勝利を奪いました。このようなビッグマッチあるいはサプライズ的な介入だけではありません。現在の新日本プロレスでは邪道選手の介入が日常茶飯事の出来事です。もちろん邪道選手の介入も反感を買っている部分があるのですが、ディック東郷選手のそれとは質が異なっているように思います。

私自身はこうした介入も含めてプロレスだと考えています。そもそも介入を根絶すべき!とは思っていません。ヒールレスラーも介入なしで正々堂々と戦ってほしいという意見を目にすることもありますが、そうなるとヒールとベビーフェイスの区別がなくなってきます。介入や凶器攻撃なしで、振る舞いや言動でヒールを表現するということもできるでしょう。その立ち位置にいるのがかつてのL.I.Jであり、現在のユナイテッド・エンパイアです。鈴木軍なんかもこれに近いかも知れません。一方で、わかりやすいヒールレスラーというのも必要だと思います。かつてはそれがタイガー・ジェット・シン選手やアブドーラ・ザ・ブッチャー選手でした。凶器攻撃をして相手を血だるまにするというのが彼らの戦法でした。しかし、現在の新日本プロレスでそのような凄惨な試合はあまり望まれていないように思います。そして現在の新日本プロレスにおけるわかりやすいヒールレスラーとは、相手を流血させるようなレスラーではなく、介入ありきで試合をするレスラーになってきたのではないかと考えます。時代に合わせ、新日本プロレスとファンが求めるわかりやすいヒールレスラー像が変わってきたのでしょう。そういうこともあってか、近年ではセコンドが手を出したとしてもそれだけで即反則負けというケースがほとんどありません。レフェリーのブラインドをつくテクニックも向上してきたと言えるかもしれませんが。

Advertisement

YOSHI-HASHI戦における介入

それでは、この日の試合でディック東郷選手がどのように介入したのかを見ていきたいと思います。まず試合序盤、ロープに走ったYOSHI-HASHI選手の足を取ろうとしました。YOSHI-HASHI選手は攻撃の手を止め、場外のディック東郷選手を追いかけたところでEVIL選手のカウンター攻撃を喰らってしまい、攻守が逆転しました。この直後にコーナーマットを外した行為も広義的には介入になるでしょう。

次の介入は試合中盤、場外に出されたYOSHI-HASHI選手をディック東郷選手が場外フェンスにぶつけた行為があります。この時は場外フェンスにぶつけたYOSHI-HASHI選手をすぐにディック東郷選手がリング内へと入れました。

3回目の介入は試合中盤から後半に差し掛かろうとしたあたりです。エプロンからリング内のEVIL選手に対してスワンダイブの攻撃を仕掛けようとしたYOSHI-HASHI選手の足を引っ張って場外に引き摺り落としました。

試合終盤、EVIL選手がバタフライロックをかけられているタイミングでディック東郷選手がリング内に入りました。YOSHI-HASHI選手が技を解いてディック東郷選手を排除したのですが、試合の流れがプッツリと切れてしまいました。

そして試合最終盤、YOSHI-HASHI選手が奥の手の緊箍児を仕掛けました。そのタイミングでディック東郷選手がリングインし、レフェリーを引きつけました。それにより、レフェリーがカウントを取ることがなく、奥の手の緊箍児が無駄になってしまいました。これでディック東郷選手に気を取られたYOSHI-HASHI選手に対してEVIL選手のローブロー攻撃が入り、EVILでフォール負けとなったわけです。

Advertisement

ディック東郷の介入のマイナス面

今回の試合をよく振り返ってみると、ディック東郷選手の介入の際の基本パターンであるスポイラーズチョーカーを使った攻撃がありませんでした。しかし、スポイラーズチョーカーによる攻撃はディック東郷選手の介入の評判が悪い一つの象徴的な行為だと考えています。ディック東郷選手の介入が不評な理由はおおよそ次の3点に集約されるのではないでしょうか。

まずはディック東郷選手の介入は試合の流れをぶった斬るためということです。今回は使用しませんでしたが、スポイラーズチョーカーで相手の首を絞める行為は、それまでの試合の流れを完全に止めてしまいます。ディック東郷選手の介入は試合のリズムに乗れていないように見えます。対照的なのは邪道選手の介入です。邪道選手といえばロープに振られた選手の背中に竹刀を叩き込むのが定番の介入行為です。背中を叩かれた選手は走るのをやめ振り返ってしまうので、逆に攻撃を喰らってしまうことになります。一方でスポイラーズチョーカーによる攻撃は一瞬で終わることがありません。加えて見た目にも非常に地味です。リング上の戦いに集中していた会場の観客の方々の気持ちも切れてしまいかねません。声を出せる状態であれば、観客が「あーーー!!!」と叫ぶような介入ではなく、「あぁ・・・・」とため息をついてしまうような介入になっているようにも思います。

次に、介入行為によってディック東郷選手が必要以上に目立ってしまうためということです。邪道選手や外道選手が介入する際には、すぐに排除されたり、すぐに引き下がったり、あるいは目立たないところから手を出したりといった形で、基本的にそれほど目立ちません。しかしディック東郷選手の場合はスポイラーズチョーカーによるチョーク攻撃という特性も相まって非常に目立ってしまいます。首を絞めているとどうしてもディック東郷選手の体が対戦相手のレスラーよりも高い位置に来てしまいます。その状態が長時間続くと介入肯定派の私であってもちょっと嫌気がさしてくることもあります。介入するセコンドはやはりリング上で戦っているレスラーよりも目立ってはいけないという思いがあるからです。

そして、3つ目としては、EVIL選手の価値を毀損しているためということです。内藤選手がIWGPを初戴冠した試合では、内藤選手による体制批判とそれを支持するファンの気持ちがありました。体制派の象徴であり、最強のレスラーであるオカダ選手を倒すための介入を観客が支持したことは不思議なことではありません。ですので、この時の介入は内藤選手の価値を毀損するものではないのだろうと思います。一方のディック東郷選手の介入は、EVIL選手の価値を毀損している面もあるように思います。つまり、EVIL選手が勝利する際にはディック東郷選手の介入からのローブロー、そしてEVILでフォール勝ちというパターンがあります。この一連の勝ちパターンがEVIL選手を弱く見せてしまっているのかも知れません。

こうした理由を考えてまとめているうちに、介入肯定派の私ですらディック東郷選手の介入に対し、そりゃダメだよなーと少し腹立たしく思えてきました。ましてや介入否定派の方からすると相当なストレスなのだろうと思います。しかしこれがディック東郷選手の本当の狙いなのかも知れません。あえてヘイトを溜めるような形での介入をすることで、心の底からのブーイングを浴びせられるEVIL選手という大ヒールを作り上げていくことを目指しているのではないかとも考えることができます。それはかなりうがった考え方かも知れませんが。

他の人気プロレスブログはここをチェック!クリックで応援していただけましたら嬉しいです。


プロレスランキング

そんなディック東郷選手のことをもっと知りたい方はこちら。オススメです。