高橋ヒロムからの提案に対する新日本の反応は?

高橋ヒロムからの提案に対する新日本の反応は?

2021年8月27日、高橋ヒロム選手が約半年間の欠場をへてリングに復帰しました。この日は後楽園ホールはほぼ満員でした。その要因はおそらくメットライフドーム大会に向けての最終戦ということよりも高橋ヒロム選手の復帰戦ということが大きかったのでしょう。

DOUKIとの因縁

高橋ヒロム選手とDOUKI選手が新日本のリングで対戦するのは、2020年11月23日、Gメッセ群馬で行われたBOSJ27公式戦以来二度目です。高橋ヒロム選手がカマイタチとしてCMLLのリングに上がっていた頃に対戦がありそうなものですが、実は新日本のリングで初対戦だったわけです。しかも私が調べた限りではタッグでの対戦もありません。この日の高橋ヒロム復帰戦はタッグを含めて二度目の対戦だったということでしょう。

2020年に初対戦が決まった時、高橋ヒロム選手はDOUKI選手との関係をYouTubeで語っていました。

2010年8月デビューの高橋ヒロム選手と2010年10月デビューのDOUKI選手は、リングこそ違えどほぼ同期になります。DOUKI選手はミラノコレクションA.T.さんを通じてメキシコ遠征中のタイチ選手を紹介され、メキシコ生活を始めています。以来、メキシコ遠征をする新日本の多くの選手と交流を持ってきたことはよく知られた話です。

YouTube動画で高橋ヒロム選手が語っているのですが、実はメキシコではタッグを組んだことがあったようです。しかし、そうした試合データを発掘するのは困難です。私もこの動画を観た時に探してみたのですが、1試合のデータも発見することができませんでした。ただ、それもそのはずということも言えます。高橋ヒロム選手が動画の中でも語っているように、DOUKI選手とタッグを組んだ試合というのは地方の外の会場だったり、誰かの誕生日だったりということです。しっかりとした会場でタッグを組んだことはないということでしょう。それは、当時の高橋ヒロム選手(カマイタチ)とDOUKI選手の置かれたポジションの違いと言っても過言ではありません。そしてそもそもDOUKI選手はCMLLのリングに上がったことがほとんどありません。調べたところ、デビュー直後の2012年にKansukeとして1試合、DOUKIとして1試合、CMLL B-Showsのリングに上がったことがあったぐらいです。私はあまり詳しくありませんが、このB-Showsとは要するに2軍戦のようなもので、CMLLのメインの興行ではありません。かつての新日本のNEVER興行のようなものでしょうか。つまり、メキシコ時代の高橋ヒロム選手とDOUKI選手は、個人的には交流を保っていたものの、住む世界、上がるリングが全く異なっていたということです。

この日の試合はDOUKI選手も意地を見せ、高橋ヒロム選手をあと一歩のところまで追い込みます。しかし、1週間後にタイトルマッチが控えている高橋ヒロム選手はどうしてもこの試合を落とすわけにはいきません。そして、復帰戦の相手を務めてくれたDOUKI選手への想いもあったのでしょう。ここで試合に負けて「いやー、今日は負けちゃったけど、タイトルマッチに向けていい調整ができましたー。」のようなコメントを残すようでは、それこそ「リハビリ」としてのDOUKI戦になってしまいます。そうではない、俺はお前と真剣に向き合いたい、そのために万全のコンディションを整えてきたんだ!ということを示すため、高橋ヒロム選手はDOUKI選手をマットに沈める必要がありました。DOUKI選手には高橋ヒロム選手のそうした想いが伝わったのか、あるいはただ悔しかったのか、一筋の涙が流れる姿がファンによって撮影されていました。しかし、両者にとっては非常に意味のある29分43秒となりました。

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高橋ヒロムからの提案

試合後のバックステージで、高橋ヒロム選手から会社に向けて提案が出されました。

ジュニアとヘビー、違いが分かんねぇな。よくか悪くか、違いが分かんねぇな。でもコレってさ、ヤバいんじゃないの?全てが曖昧だとさぁ、これから先、ジュニアをやりたいと思う人間がいなくなっちゃうんじゃないかって、すげぇ不安になったよ。(中略)だったらさぁ、思いついちゃったんだよ。ジュニアによる、ジュニアのための、ジュニアの入門テストをやろうぜ。トレーナーはそうだなぁ・・・金丸さんがいいかなぁ?いや、いいんだ、いいんだ、コレを一人のファンの意見として聞くか、それとも、真剣に向き合って、そろそろ考えるべきなんじゃないのか、新日本プロレス。(引用ここまで)(新日本プロレス公式サイトより)

ジュニアとヘビーの違いがよくわからなくなってきた要因は大きく2つあると思います。1つは、ヘビー級の選手でも空中戦をするようになってきたこと、そしてもう1つは100キロ未満でありながらヘビー級戦線で戦う選手が増えてきたことです。

猪木藤波の時代、闘魂三銃士の時代、第三世代の時代において、ヘビー級で空中殺法を使う選手はほとんどいませんでした。武藤選手が唯一の例外でしょうか。また、棚橋選手がハイフライフロー、真壁選手がキングコングニードロップをフィニッシュホールドとして使っていますが、これはヘビー級の体を生かした説得力のある技ということで、ジュニア戦士のそれとは違った意味合いがあります。現在ではオスプレイ選手や飯伏選手を筆頭に、ジュニアの試合かと思うほど華麗な空中殺法を多用する選手が増えています。かつての新日本でジュニアから体重を増やすことでヘビーに転向した藤浪選手や越中選手などは、ヘビー転向後にはヘビー級らしい試合運びをしていたように思います。ジュニア時代の動きもできるけれどもある程度それを封印しつつ戦っていた、そんな印象です。オスプレイ選手も徐々に戦い方を変えてはいますが、それでも空中殺法は変わらず使用し続けています。おそらく現在の新日本マットでは、そうした戦い方が受け入れられるようになってきたということも一因でしょう。それに加え、科学的なトレーニング方法、科学的なケアの方法が発達したことでこうした戦い方を続けることが可能になったのかもしれません。

私としては2つ目の理由、すなわち100キロ未満の選手がヘビー級で戦うということがこの曖昧さを増幅させているように思います。かつてはこの100キロという壁が大きかったように思います。1992年7月8日、藤波辰爾選手が約5ヶ月ぶりの復帰戦として、テコンドーの選手と異種格闘技戦を行いました。この時、田中ケロリングアナウンサーの「183センチ、99.5キロ」というコールに会場がどよめきました。田中ケロリングアナもこの「99.5キロ」を強調していたように記憶しています。わざわざ小数点以下の数字まで含めてヘビー級の藤波選手が100キロを切ってきたということを強調したのです。

現在の新日本のリングで、公称100キロ未満のヘビー級戦士は、飯伏選手、ザック・セイバー・ジュニア選手、KENTA選手、本間選手、チェーズ・オーエンズ選手、ジュース・ロビンソン選手、デビッド・フィンレー選手、高橋裕二郎選手あたりになるでしょうか。ただ、これらの選手はそれぞれに肉体なり戦い方なりで説得力をもってヘビー級戦線にいますので、これ自体は好意的に捉えています。

それでも、高橋ヒロム選手が危惧することは理解できます。今後、ジュニアであることに誇りを持って戦っていこうとする選手、ジュニア選手に憧れて入門する選手が減少していくだろうということは予想できます。そのためにジュニアの戦いでドームのメインを張ることが必要でしょうし、高橋ヒロム選手ももちろんそうした方面での露出を狙っているでしょう。ただ、それに加え、ジュニアでの戦いを目指して入門してくる選手を増やす必要があります。現在の新日本で、20代でジュニア戦線にいる生え抜き選手はマスター・ワト選手のみです。高橋ヒロム選手が上村選手に期待していたという気持ちも非常によくわかります。

やはりこれは、新日本の入門基準が厳しいということが一つの要因でしょう。以前に当ブログで各団体の入門条件を比較したことがありました。

プロレスラーとしてデビューするには?プロレス団体の条件比較 – プロレス生活

最新の募集条件では、新日本プロレスのみが身長180センチ以上という基準を設けていました。そもそも身長制限を設けている団体が少なく、新日本プロレス以外では全日本プロレスが175センチ以上という条件を設けていたぐらいです。新日本プロレスでも年度によっては条件を緩めたり、あるいはさらに厳しくしたりしているようですが、この身長制限のために入門テストを受けることすらできないという若者が多くいることも事実でしょう。ただ、高橋ヒロム選手はこの制限を撤廃してほしいということを要求しているわけではありません。おそらく、こうした通常の入門テストに加え、ジュニア戦士を目指す若者に向けた別枠の入門テストを行ってほしいということなのでしょう。この入門テストをトレーナー(仮)の金丸選手をはじめ、タイガーマスク選手やライガーさんらが評価し、入門する選手を選抜することが、将来のジュニア戦線の充実につながっていきます。高橋ヒロム選手のこの提案は決して突拍子もないものではなく、将来の新日本プロレスを見据えた戦略的な、そして新日本プロレス愛に満ちたものだと思います。

また、トレーナーに金丸選手を指名したというのにも納得できます。立場としてはヒールですが、この日も非常にバランスの取れた解説を行っていました。試合だけでなく、プロレスというものを総合的に俯瞰し、分析する能力に長けているのだと思います。いきなり高橋選手の提案通りになるとは思えませんが、将来的には期待してしまいます。これに対する新日本プロレスの反応はまだありませんが、少なくとも検討はするでしょう。あるいは会社としては既に検討を進めている状態で、高橋ヒロム選手の口を通してアドバルーン的にこれを発信してファンの反応を探っているのかもしれません。いずれにせよ、私はこの提案が実現の方向に向かっていくものと思っています。メットライフドーム大会の一夜明け会見あたりで何かあるかな、と期待しています。

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